溥儀の壮絶な人生と近代史。映画ラストエンペラー・レビュー

 先日の北京旅行は、万里の長城と紫禁城(現・故宮博物院)の二つの世界遺産観光をメインとする旅でした。  旅の数日前に予習として、紫禁城を貸し切って撮影された映画「ラストエンペラー」を観ておきました。
 ラストエンペラーはベルナルド・ベルトルッチ監督の1987年アカデミー賞をほぼ総なめにした(9部門)名作です。 当時は相当話題になったのだろうと思いますが、まだちょっと若かったかな。私よりも若い世代の人達は観ていない人が多いかも知れません。ということで今回初めての視聴です。
~※以下ネタバレを含みます~

ラスト・エンペラー

 なるほど素晴らしい映画ですね。その凄まじい歴史背景と孤独な溥儀の人生、日本との関連性にも驚き、あわてて史実を調べつつ2回続けて視聴した次第です。特に最初と最後、そして音楽が素晴らしい。

衝撃のオープニング
 1950年の満州国、中ソ国境の駅を舞台に映像が始まる。ここに戦犯としてラストエンペラー愛新覚羅溥儀(「あいしんかくらふぎ」以降:溥儀)が登場し自殺を試みる。なぜ?場所も時代も予想を裏切られ、いきなり不意打ちを食らった。故に食い付いて観てしまう。

★感動のエンディング
 元皇帝が、観光地と化した紫禁城に一般市民として入場料を払って戻ってくる。 いったいどんな思いで戻ってきなのだろうか。それを考えただけで涙が出てくる。 そして、ドドメのコオロギ。 紫禁城に幽閉され、満州では日本の支配下に置かれ、そして服役も受けた人生。 2カ国の皇帝を経験した男の人生は、小さな壺に閉じ込められたコオロギのように孤独で自由の欠片もない人生だった。 もちろん自分の意志で国を動かすことなど出来なかった。まさにペットのコオロギにピタリと重なる。

★溥儀の一生を表現したBGM
 坂本龍一作曲のBGMも耳から離れません(後日サントラも借りてしまった)。二胡の奏でるメロディーと優美なオーケストラのハーモニーが琴線を揺さぶるテーマ曲は、転調が多用され、流転の人生を歩んだ溥儀そのものを表現している。さすがは教授だ、ちなみにグラミー賞も獲得しています。

【映画ラストエンペラーの撮影現場として使用された紫禁城の太和殿。明清500年の歴史が詰まる世界遺産です。ここを訪れたとき、ずっと頭の中でラストエンペラーのテーマ曲が流れていましたw】

太和殿

 本編内容は163分という長編にもかかわらず、一部分しか表現しきれていないほど史実は複雑。

 知識が曖昧だと理解しにくい。たぶんまた観るだろうから、覚書きを兼ねて溥儀の一生と時代背景を簡潔にまとめました。【以下:自分用メモです】

・1906年 溥儀生誕
・1908年 即位 2歳10ヵ月で母親のもとを離れ、清の12代皇帝となる。
・1911年 辛亥革命勃発 翌年に退位。 君主制が廃止され、共和制国家である中華民国(現在の台湾)が樹立され、袁世凱が内閣総理となる。 映画内で溥儀は、弟からこの事実を聞く。
※この弟・溥傑はラストエンペラー公開時に映画を観て、今までで一番まともな作品だと評価している。
もう自分は皇帝ではないと知った溥儀は、欧州などに興味を持ち、紫禁城から出たいと望むようになる。 しかし、退位後も紫禁城内に幽閉される。
・1922年 正妻・婉容、側室・文繍と結婚 映画内の正妻婉容は佐藤江梨子風。セクシーなシーンも楽しめる。
・1924年 クーデターにより紫禁城を退去させられる。 映画ではテニスを楽しんでいた時の出来事だ。

Last Emperor of ChinaLast Emperor of China / tonynetone

中華帝国最後の皇帝「ラストエンペラー」としての溥儀の人生はここまでだが、その後に波乱に満ちた数奇な人生が待っている。
・紫禁城という住居を失った溥儀は、北京の日本公使館に保護され、1925年に天津日本租界張園に入居。 (1923年の関東大震災時に日本へ義損金を送るなど、以前から日本との親密な交流があった)
・1931年 大日本帝国陸軍からの満洲国元首への就任要請を受け、満洲へ移る。
坂本龍一演じる黒幕、満州映画協会理事の甘粕正彦は、元大日本帝国陸軍大尉。
・1934年 満州国の皇帝に即位。 つまり二つの国で皇帝となった。しかし満州国は事実上、日本軍が支配していた。
・1945年 満州国崩壊。 日本へ亡命を試みるもソ連軍の捕虜となる。
・1950年 ソビエト連邦での5年間の拘留を解かれ、中華人民共和国に送還される。 映画の冒頭シーンはこの際のハルビン駅での出来事である。 その後、戦犯管理所に収容される。
※東京裁判などこの辺りの史実は、映画に描かれていないが日本人にとっては非常に興味深いところ。簡単にはまとめきれないので割愛。
・1959年 模範囚として釈放される。北京植物園に庭師として勤務。
・1967年 癌により死去。

 そもそも映画「ラストエンペラー」は、ベルナルド・ベルトルッチが溥儀の自伝「わが半生」に感銘を受けて製作した映画です。映画では触れられていない事実や溥儀の思いが詰まっていることでしょう。 時間を見つけて読んでみたいと思います。

わが半生―「満州国」皇帝の自伝

わが半生―「満州国」皇帝の自伝〈上〉 (ちくま文庫)
わが半生―「満州国」皇帝の自伝〈下〉 (ちくま文庫)

史実についてはウィキペディアを参考にさせて頂きました。

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2 Responses
  1. みみ より:

    重くて切ない映画ですがラストエンペラーは私も大好きです。
    わが半生、読んでみたくなっちゃいました(*^_^*)
     

  2. boserock より:

    ホントに凄い人生ですよね。本人はどう思っていたのか気になりますね。

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